画像はマウスの発明者、ダグラス・エンゲルバート氏が88歳で死去 – ITmedia ニュースから拝借、氏と初期マウスのレプリカ
参考:マウスの発明者、ダグラス・エンゲルバート氏が88歳で死去 (ITmedia ニュース) – Yahoo!ニュース
参考:マウスの父、ダグラス・エンゲルバート、88歳で逝去 | TechCrunch Japan
各紙で報じられているので、ご存じの方も多いと思うが、コンピューターマウス(以下単にマウス)を発明したダグラス・エンゲルバート氏が7月2日(現地時間)88歳で亡くなった。
ダグラス・エンゲルバート(Douglas Carl Engelbart、1925年1月30日 – 2013年7月2日)は、アメリカ合衆国の発明家で、初期のコンピュータやインターネットの開発に関与した。
同氏が発明後、マウスの特許は、Appleに4万ドルあまりで買い取られ、Macintoshは元よりパーソナルコンピュータにとって無くてはならない存在となった。
私がMacを使い始めたのも、最初にiMacに触った時、マウスを介して初めてパーソナルコンピュータと会話できたことに感動したからだ。
そんな氏の死去に際し、現在のパーソナルコンピュータと人との対話について考えてみたいと思う。
マウスの変遷
冒頭の写真にあるように、発明当初のマウスは木でできた大きな箱に、二つの車輪をつけた大がかりなモノであった。
後に2ボタンマウスになって、右クリックによる操作が一般的になったが、私がiMacを使い始めた頃も、ワンボタンであり、Appleは頑(かたく)なに2ボタンにするのを拒否していた。
画像はiMac – Wikipediaから借用
もちろん、コマンドキーを押しながらクリックすると、右ボタンに相当する “コンテクストメニュー“が表示され、市販の2ボタンマウスを繋げば、右ボタンのメニューとしてそれが表示された。
これは、右ボタンによるメニューはあくまでOSの使い勝手を上げる補助的なモノであり、操作はメニューバーで完結するべきだというポリシーによるものだと思う。
他社のOSをいじっていると、しばしば右ボタンにしか出てこないメニューがある。
このような操作方法だと、知っている者しか操作できない、極めて初心者に不親切な操作になるからだ。
初心者の私は、しばしば混乱し、イライラした。

※上から初期のワンボタンマウス、マイティマウス、Magic Mouse
市販のマウスにはスクロールホイールなどが搭載され進化していったが、Apple純正のマウスの形は基本的にワンボタンを貫いた。
(機能を割り当てることはできたし、スクロールホイールの代わりにブルブルする突起は付けたが)
こういったAppleの考え方は、常に技術や利便性だけを追い求めるのでは無く、人間が使うことを意識しているからこそ産まれてくるものだと思う。
これからの入力デバイス
私は、Apple 純正のMagic Trackpadが気に入って使っているが、まだまだ人気があって、当分の間無くなりはしないだろう。
しかし、パーソナルコンピュータと会話する方法は、iPhoneやiPadなどタッチパネルの普及により、広がりを見せている。
また、Siriなどで使われている “音声認識“は、不完全なところはあるが、とても精度が上がっており、間違いなく次世代の入力デバイスの一つである。
また、人の視線による入力デバイスの開発も進んでいるようだ。
Kinect を視線入力デバイスにするアタッチメントNUIA eyeCharm – Engadget Japanese
これらに共通しているのは、パーソナルコンピュータが、人間の自然なコミュニケーション手段に近づいていることだ。
アイコンタクトで意思疎通したり、触れたり、言葉で理解し合ったり。
iPhoneやiPadを含め、パーソナルコンピュータは、ますます人間の良きパートナーとなるだろう。
余談だが、Siriに有名なSF作家、アイザック・アシモフ氏が提唱した “ロボット工学三原則“を訪ねると楽しい答えが返ってくる。

人が機械に合わせるのではなく、機械が人に合わせる、至極当たり前の発想だろう。
コミュニケーション能力
こうやって、マウスから始まった人間とパーソナルコンピュータのコミュニケーションは、ますます円滑にできるようになることは想像に難くない。
私は、先日書いた記事のように、Siriなどの所謂人工知能を使った、人間の心をケアするコンピュータなどにも期待している。
関連:【iOS】AppleがSiriで自殺防止の受け答えを始める。最新のテクノロジーは自殺者を救えるか?
参考:KIBO ROBOT PROJECT、ISSで若田宇宙飛行士と対話するロボットの名称を決定 | 開発・SE | マイナビニュース
この問題は、本来人間が優しさを持って解決すべき事であるが、人の手の及ばぬところを補完する研究や取り組みはとても素晴らしいものだ。
人は、苦しみや悲しみでは死ぬことは無く、その苦しみや悲しみを聞いて貰う相手がいない孤独感に耐えられず死を選ぶという。
Think different
スタンフォード研究所(SRI)のコンピューター科学者だったエンゲルバート氏は1968年、サンフランシスコでコンピューター技師ら約1000人を前にした実演(デモ)で初めてマウスを披露。また、ビデオ会議の技術や、後のウェブ構造の基礎となるテキストリンクのアイデアも発表した。
コンピューターマウスの発明者、D・エンゲルバート氏が死去 | 世界のこぼれ話 | Reuters
プレゼンテーションの母と言われるデモ
これらの技術は、当時あまりに先進的な研究のため周囲の理解を得られず、時には迫害されたという。
コンピューターが車ほど大きな計算機だった時代から、誰にでも使え、人々をそれまでなかったような形でつなぐ道具にすることを、博士は目指した。時代よりも先に進みすぎていたから、変人扱いされ、時に孤立した
「その人がどれだけ成熟しうるかは、どれだけの辱めに耐えられるかに、正比例する」と、博士は語ったそうだ。
中日新聞:中日春秋:コラム(CHUNICHI Web)
この方もまた、 “Think different” な人だったようだ。
偉大な発明家 ダグラス・エンゲルバート氏冥福をお祈りしたい。
Written by Metal(@Metal_mac)
なお、追悼記事が多く書かれており、林信行氏も、ダグラス・エンゲルバート氏の追悼記事を書かれているので一読をお勧めする。
参考:マウスを発明した現代ICTの立役者:追悼ダグラス・エンゲルバート(前編)by 林信行
参考:【山田祥平のRe:config.sys】マウスの父、ダグラス・エンゲルバート氏逝く
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