昔船に乗っていたというと、よく訊かれるので記事にしておく。
ずばり、人は船酔いする。
ごくたまに一度も船酔いしたことがないという人もいないことは無いが、規格外だと思って良いレベル。
きっと三半規管が壊れている。
この船に強いか弱いか、というのはなかなか一概にはいえない。
なぜなら、大きい船の揺れと、モーターボートのような小さい船の揺れ方も違う。
また、その時の体調によっても違う。
寝不足や二日酔いだと結構辛い。
また船に強い人間でも、酔いやすい行動を取ると酔う。
だから船に強い弱いというのは、一概に言えないことが多いのだ。
これから、海洋レジャーシーズンが始まるが、今回は、約20年間の乗船経験から、船酔い防止の方法についてまとめてみた。
船酔いを防止する行動
いかに酔わない行動を取るかがコツになる。
バスや電車に乗って、本を読むと酔いやすくなるのと同じように、細かい文字を読むのは止めた方が良い。
一点を見つけると、それだけ酔いやすくなるので、できるだけボーッとして目の焦点をぼやかす。
また、香水などの強い臭いも酔う原因となる。
わたしが初任で乗った巡視船の船長は、商船上がりで異常に船に強かった。
ブリッジ(船橋)でワッチ(当直)に立っていたとき、大時化でわたしは我慢できずに1階下にあるトイレへ口を押さえて吐きに行く途中、サロン(士官が食事を取る食堂)の前を通ったときのこと。
船長が大きく揺れるサロンで新聞を広げながら、「安田君は野球は上手かね?」と訊かれた。
その船長は草野球が大好きで、新人のわたしをチームに入れたかったようだ。
わたしは、球技が不得意なので、「下手です」と答えようとしたが、口を開くと溢れ出そうだったので、そのままトイレに駆け込んだのを覚えている。
新人のわたしには、こんなに船に強い人がいるんだ!!!とビックリしたのを覚えている。
また、食べ物の臭いも結構キツい。
だから、大時化の状態でも主計科(船内で調理をしたり事務を担当する科)は食事を作らなければならないので、大変だ。
自分たちが食べられなくても配膳する。
当然、配膳しても食べに来るのは船に強い人間ばかりだが、作らないわけにはいかない。
ほとんど手を付けられない料理を前にして、船に強い先輩は「もったいないな〜揺れると足を踏ん張るから腹が減るのに」と人の分まで食べていたのを目撃したことがある。
こういう特殊な人種は別にして、一般の人は乗船直前の食べ過ぎ飲み過ぎ、乗船中の食事には気をつけた方が良いだろう。
船酔い後の処置
船酔いしたら、我慢せずに吐いた方がスッキリする。
トイレへ行って、気持ちよく吐く。
この場合、配管が詰まるとトイレが悲惨な状態になるので、必ず大便器で水を流しながら吐くこと。
中途半端はよくないので、指を喉へ突っ込んで思いっきり出した方が、スッキリする。
この後が大事だが、吐いた後は必ず水を多めに飲むこと。
腹がいっぱいになるまで飲む必要は無いが、ある程度は飲んだ方が良い。
というのも、次に吐くものが無くなると、辛いからだ。
どのみち吐くのなら、気持ちよく吐きたいもんね。
胃液しか吐くものが無くなると、結構苦しい。
時化ている間は、吐いては仕事に戻り、吐いては仕事に戻る。
その繰り返しだった。
何航海かすると慣れてくるのもあるし、ベテランになると酔わないコツを掴むので、滅多に吐かなくなるが、それでも酔うときは酔う。
酔い止めは飲まないのか?
という質問も受けるが、飲む人は滅多にいない。
気休め程度の効果しか無いし、身体が薬に慣れると利き目も落ちる。
酔い止めを飲んだという「プラシーボ効果」はあるかもしれないが、薬を飲まずに身体を慣らした方が順応が早いと思う。
船酔いしないメンタル
船乗りがお客さんで船に乗ると酔うという話を聞いたことがあるだろう。
これは、人に寄るかもしれないが、気を抜いているより、緊張していた方が酔い難いのも確かである。
全長130メートルのヘリコプター搭載型の巡視船に乗っていたとき、数日間7〜8メートルのうねりの中で海難救助をしたことがある。
巡視船勤務の経験が無い「航空科」人が最初は船酔いでダウンしていたが、しばらくすると食堂で立ってお握りを頬張っていた。
※揺れているので料理を皿に盛ることができないため。
「大丈夫ですか?」と訊くと「もう慣れた、怖くて寝ていられない」と言っていたのを覚えている。
あまり時化が大きいと、転覆、沈没の危険も出てくるので、悠長に「船酔い」で寝ているわけにはいかなくなってくる。
後年、巡視艇の船長をしていた時は、何度か大きな追い波を受けながら走ったことがある。
この場合、船がサーフィン状態になるのだが、一歩間違うと転覆するので気が抜けない。
このように気持ちの持ち方にもよるので、船酔いしないためには、自分に気合いを入れることをお勧めする。
まとめ
いろいろ書いたが、船酔いだけで死んだ人はいないので、酔ってもあまり気にしないことだ。
「酔うかもしれない」と思っていると酔ってしまう。
乗船したら、気持ち悪くなる前に寝てしまうか、一点を見つめずにボーッとすること。
ではでは、良い(酔い?)船旅を。
Written by ✨️Change view point コーチ メタル
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